
![]()
本タイトルの災害シーン・災害マニュアルを監修している防災・危機管理ジャーナリスト渡辺実先生によるコラム。
■最終回
「絶体絶命都市3」監修を終えて
1995年の阪神・淡路大震災を機に幕を開け、21世紀前半が巨大地震の再来周期に入ったことをふまえると、この来たる巨大地震へ戦いを挑むためには、若い世代の防災力向上が最重要テーマである。そのために、若い世代が関心を持つメディアを使って防災・減災のメッセージを送ることに私はこだわってきている。 震災から10年目の2005年に「彼女を守る51の方法」(マイクロマガジン社)というグラビアを活かした防災本を出版し、その後同名の週刊漫画誌(新潮社)の連載を経て、全5巻のコミックスにまとまった。現在、このコミックス「彼女を守る51の方法」は、翻訳・出版されて海外での防災教育に役立っている。次は、多くの若者が熱中し生活の一部となっているゲームの世界で、若い世代の君たちへ防災・減災メッセージを送りたいと考えていた。
2008年5月某日。九条プロデューサー(アイレムソフトウエアエンジニアリング)は私の事務所に入るなり、思い詰めた顔で「どうしてもゲームソフトの監修をお願いしたい」と依頼してきた。九条君をはじめとしたアイレムスタッフの人柄に惚れて、ゲームの監修と災害マニュアルの執筆を快諾し、スーパーバイザーとしてスタッフと一体になり約1年間この作品の製作に携わってきた。
しかしゲーム製作の世界は、私にとって初めての経験であり、これまでに手がけた書籍づくりとはまったく異なっていた。実際に作業が開始されると私はおおいにとまどいつつも、パートごとに製作される素材にいくつも注文をつけ、よりリアリティのある災害シーンを追求した。徐々に高画質へ、そしてストーリーのクォリティーが高くなっていくプロセスには、驚きの連続だった。こんなスピードで間に合うのか、と何度も現場へ檄を飛ばしながら、実は必死についていったのは私だったこともある。
ゲームを楽しみながら防災のノウハウを身につけることを目的とした災害マニュアルは、このゲームソフトの目玉の一つである。巨大地震に遭遇したとき、より身近に起こり得る事態から生命を守るために必要なノウハウを具体的に提供していった。ここでは製作現場からの、こんな時どうすればいいのか、という実に素朴な疑問にも答えつつ、最終的には81項目のマニュアルがゲーム内の要所要所に配置されている。
発売を前には、ラジオドラマとゲームのコラボレーションを企画した。ニッポン放送で特別番組ラジオドラマ「絶体絶命都市~めぐりあうために~」を放送し、ラジオの世界からも「絶体絶命都市」のメッセージを発信した。耳にしてもらえただろうか。
2004年に発生した新潟県中越地震の時には、「ジュピター」(歌・平原綾香)という曲が多くの被災者の心を支えた。これまであちこちで起きた地震災害の時にも、様々な歌が生まれ、人々がくちずさみ、どれだけ多くの被災者を癒してきたか、その効果は周知のことである。災害時の歌の役割、それをこのゲームではみごとに有効に表現している。ゆっくりと心に染み渡り、感動的な飯田舞さんの主題歌「キミの隣りで・・・」は、絶賛に値する。私もこの歌に癒されたひとりだ。
監修作業を終えて幾日も、私はやきもきしながら待った。そして主題歌「キミの隣りで・・・」とともに「絶体絶命都市3−壊れゆく街と彼女の歌−」が完成、2009年4月23日に発売となった。
約1年間、アイレムのスタッフと共に「絶体絶命都市3」の製作に関われたことを、私は誇りに思う。多くの若者が、このPSPゲームソフト「絶体絶命都市3」と格闘し、攻略していく課程で、知らず知らずに一人一人の防災力が向上してくことを確信し楽しみにしている。 その結果、近い将来必ず経験することになる巨大地震と遭遇したとき、君自身の生命を守ることはもちろんのこと、恋人や家族、大好きな、大切な人を守ることができる「絶体絶命都市戦士」になっていることを期待して、このコラムを終えることにする。